記憶の共有は縁の結び目

ライター角田奈穂子の「雑な生活」ほぼ日記

笑いと怖さが表裏一体のエンタメ三昧

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まだ三が日なのに、時計代わりのTBSラジオも通常番組になり、新年気分も微妙な今年ですが、そうはいっても急ぎの仕事はなし、連絡のメールもなし状態で、のんびり過ごしています。

こんなときは、映画やドラマの鑑賞、読書三昧です。2日に観たのは、Netflixの2本。1本は、サンドラ・ブロック「消えない罪」、もう1本は、レオナルド・ディカプリオ主演の「ドント・ルック・アップ」でした。

 

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「消えない罪」は、新年に観るのもどうかと思うような暗めのお話。サンドラ姐さん演じるルースは、幼い妹を守るため、家を強制退去させられそうになるなかで、警官を銃殺してしまい、その罪で20年服役。映画は、刑務所を出所してきたところから始まります。

殺人罪、それも街の人たちから信頼を寄せられていた警官を射殺した罪は、法律上では償っても、出所後の暮らしでは消えることがなく、ルースは住まいや職場で周囲の冷たい目にさらされます。それでも、「妹に一目、会いたい」という気持ちを唯一のよりどころに、さまざまな困難に耐えながら探し続ける、というストーリー。

げっそりと痩せ、目の下にクマをつくり、孤独に耐えるサンドラ姐さんの演技は、さすがに見応えあり。ぐいぐい先を見させられてしまいます。

キーパーソンの女性を演じるのは、私の大好きな映画「ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜」のエイビリーン役、ヴィオラ・デイヴィス……と、ヒューマンドラマのお膳立ては揃っていたのですが、登場人物の交流がちょいと物足りなく、ラスト20分も急ぎすぎた感があり、「惜しいなぁ」という印象が拭えず。

登場人物を減らして、流れをもう少しシンプルにしてもよかったのでは?と感じました。印象的なセリフが多々あるのですが、そこまでに至るまでの過程が飛び石ぎみなんですよね。素材は揃ってそうなので、構成(編集)の影響なのかもしれません。

とはいえ、なかなかの佳作なので、「やっぱり、サンドラ姐さんの映画には外れなしだなぁ」と思っています。

 

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もう1本の「ドント・ルック・アップ」は、社会風刺の効いたブラックコメディです。

ディカプリオ演じる天文学者ミンディ博士と、弟子筋に当たる大学院生ケイト・ディビアスキー(ジェニファー・ローレンス)が、巨大彗星を発見。が、世紀の発見を喜んだのもつかの間、エベレスト山くらいの巨大な彗星であることと、地球を100%の確率で直撃することもわかります。

この巨大彗星の激突が何を意味するかといえば、人類どころか、地球上の全生物の滅亡。ミンディ博士とケイトは、彗星の脅威を新聞やTVのメディアを通じて人々に伝えようとしたり、メリル・ストリープ演じるアメリカ大統領に訴え、彗星の軌道を変える作戦を立ててもらおうとするのですが、警告は空回りの連続。

娯楽扱いするTVメディアに飲みこまれ、SNSのネタにされ、ミンディ博士が一躍、時の人としてもてはやされたり、大金持ちのIT長者が横やりを入れてきたり、人類絶滅の危機回避より、経済効果と政治的思惑を優先させようとしたり、今の社会課題があれこれ反映される展開に。その間も、刻々と彗星は地球に近づき、果たして人類は危機を回避できるのか、という作品です。

登場人物をカリカチュア化することで笑いのツボを狙っているのですが、これがまぁ、ブラックすぎて笑うに笑えず。ミンディ博士とケイトの壁になる人たちが、どれもこれも超がつく俗物。メリル・ストリープのうまさは、いわずもがなですが、マーク・ライランスなんて、ぬめっとしたやわらかな口調がとことん嫌らしい。他にもケイト・ブランシェットなど、名優がずらりと出演。俳優たちの演技力もあって、笑いが現実の恐怖につながるという巧みな構造になっています。

「面白かったから、ぜひ観てーーー!」と軽々しく言えないけれど、「観たほうがいいよ」と言いたくなる、鑑賞後にざらっとした落ち着かない気分を残されてしまう映画でした。