記憶の共有は縁の結び目

ライター角田奈穂子の「雑な生活」ほぼ日記

ルーレット式おみくじから思い出すビジネスホンのお掃除おばさん

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昭和の純喫茶でよく見かけた球体のおみくじ器。たぶん、あの頃の子どもたちの多くがやってみたかったけど、親に許してもらえなかったアレだ。正式名称は「ルーレット式おみくじ器」ということを今日、Twitter経由で知った。Tweetの内容は、岩手県滝沢市ふるさと納税の品にルーレット式おみくじ器があるというもの。しかも「北多摩制作所」でしか作られていない、日本唯一の品なんだとか。

 

 

www.kitatamaomikuji.jp

 

「北多摩制作所」の本社は東京の芝浦だけど、工場が滝沢市にあることから、ふるさと納税にも使われているということなのだろう。第一工場と第二工場もあるところに、胸がキュンとする。それほど需要はあるのだろうか。いやいや、きっと日本のどこかで必要とする人がいるんだろう、と思ったりする。

 

最近のふるさと納税には、「えーっとコレ(返礼品)、この地域とぜんぜん関係ないじゃない」という、もはや寄付金付きカタログ通販になっている自治体もあり、ふるさと納税にまったく興味がなかった私は今頃、びっくりしたりしているのだが、「ルーレット式おみくじ器」には、遊び心があって手が出しそうになった。「北多摩制作所」のホームページには、「ルーレット式おみくじ器」の仕組みを解説したページもあり、そのアナログな構造写真にもぐっとくる。お値段を見たら、普通に商品としての購入でも、おみくじを加えると、ネタで買うにはちょっと躊躇する価格だったので、一気に冷静になったけど。

 

そんな昭和のクラシックなおみくじ器の写真を見ていて、思い出したことがある。昭和50年代には、「会社の電話機を掃除する」というお仕事があった。目撃したのは、大学卒業後に入社した会社でだ。職場は上場企業の支店だったので、ものすごくローカルな仕事というわけでもなかったと思う。

 

お掃除の女性が来るのは月に一度。昼休みになると、小さなトートバッグを持った女性がするっと会社に来て、電話機を掃除していた。アルコールかなにかで消毒したあと、クリームを使って電話機を念入りに磨き、話し口のキャップに入っていた匂いビーズみたいなものを交換するというのが手順だった。社内全部の部署を回るので、1日では済まず、順繰りに昼になると彼女の姿をどこかの部署で見かけていた。

 

昭和には、そんな、よく分からないけど、以前から慣例として続いてきた人が動く仕事があり、それで経済が回っているような部分があったと思う。今だったら、非効率ということで、バッサバッサとコストダウンされるような仕事だ。

 

電話機がレンタルの時代で、ビジネスホンという名称でNTTから貸与されていたので、月1回もレンタルサービスの一つだったのかもしれない。電話機を複数人で共有することがあったので、話し口に匂い消しのグッズもついてたんだろうなぁ。アレ、いつの間にかなくなったけど、なぜなくなったんだろう。携帯電話が普及し、固定電話の必要性が低下したのは、それから20年くらいあとのことだし。

 

調べてみたら、「電話消毒」を専門にする会社があった。

 

www.cleall.com

 

電話消毒の歩みが面白い。消毒に従事する仕事は、明治大正は、女性にとって先端の仕事だったようだ。

 

www.cleall.com

 

今も大企業には代表電話があり、部署ごとに共有電話もある。携帯電話が普及しても、なかなか固定電話はなくならない。新型コロナの今、もしかすると、また電話消毒は復活してるのかもしれないなぁ、と思ったりした祝日の昼間だった。